10年先の未来

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「食べること」は、私たち人間にとって不可欠で、最も大切なこと。2022年の世界の総人口は79億5,400万人で、年内には80億人に到達する見込みです。そのうち8億4千万人が飢餓に苦しんでいることをご存知でしょうか。9人に1人が飢餓に苦しみ、4人に1人が深刻な栄養不足状態です。日本では今も尚、食品ロスが問題となっていて、日本人は「食が裕福な国だ」と、いつまでも思っているのかもしれません。実際はどうなのでしょうか。このまま永続的に続くと思っているのでしょうか。日本の僅か先の未来、2035年(13年後) 今5歳の子供が18歳になる年、今18歳の人が31歳になる年、今31歳の人が44歳になる年、今44歳の人が57歳になる年、今57歳の人が70歳になる年、今70歳の人が83歳になる年の公表データです。



日本政府は現在、食料自給率について「コメ98%、野菜80%、鶏卵96%」などと説明しています。令和2年度のデータによると総合食料自給率は、カロリーベースでは37%、生産額ベースでは67%となっています。しかし、元農水官僚の東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は、「野菜の種の90%は海外頼みで、鶏のヒナもほぼ100パーセントが海外依存。どちらも輸入が途絶したときの自給率はすでに0パーセントに近い。米も、野菜と同様に種採りが海外でおこなわれるようになる恐れがある。そうなれば、近い将来、日本は飢餓に直面するだろう」と、述べています。実際に、2035年の日本の実質的な食料自給率が、酪農で12パーセント、コメで11パーセント、青果物や畜産では1パーセントから4パーセントと、現在の食料自給率38パーセントを大きく下回る危機的な状況に陥ると、農林水産省(以下、農水省)のデータに基づいたの試算が示しています。

豊かさの限界

このところ、日々、食糧危機に関するニュースを見ない日がなくなりました。パンデミックやロシアのウクライナ侵攻の影響で、食糧危機の問題が加速しています。2008年のような旱魃かんばつが同時に起こって、輸出規制や物流の寸断が生じれば、生産された食料だけでなく、その基となる種、畜産の飼料も海外から運べなくなり、日本人は食べるものがなくなってしまうことでしょう。私たちは、今、そんな薄氷の上にいるのです。 アメリカの元農務長官アール・バッツ氏は、「食料はアメリカが持つ外交上の強力な手段です。とりわけ、食料を持たない日本には有効です。日本に脅威を与えたいのなら、穀物の輸出を止めればいいのです。何かの事態が悪化してそうせざる得なくなったら日本は酷いことになるでしょう。日本は自国の農業だけで国民を養うことなどできないのですから。」と、述べています。



農林水産省の食料自給率によると「野菜」は80%となっていますが、これはあくまでも日本国内で栽培したというだけであり、種子から肥料等に至るまで全て国産である野菜は10%にも満たないのが実態です。なぜなら、野菜のタネは90%以上を海外から輸入しているのが現状です。現在、市場に流通している種のほとんどは、穀物メジャー企業が生産したものであり、その生産は海外で行われています。90%以上を穀物メジャー企業から買う時代です。さらに穀物メジャー企業が販売する野菜のタネは、F1種という(ハイブリッド)とも呼ばれるもので、スーパーなどで販売している野菜のほとんどは、このF1種の野菜です。F1種のタネは一代限りなので、農家は、毎年、種苗会社からタネを購入して栽培しています。F1種が普及するのは、理由はありますが、これに伴い、この50~60年の間にタネの国内自給率99%だったものが、10%以下になってしまいました。タネの自給率低下は深刻な食糧危機を更に悪化させてしまいます。


「種は命の源」のはずが、グローバルの圧力に屈した日本政府によって「種は企業の儲けの源」として捉えられ、種の海外依存度の上昇につながる一連の制度変更がおこなわれてきました。(種子法廃止→農業競争力強化支援法→種苗法改定→農産物検査法改定)
2021年の種苗法改定で、野菜で生じた種の海外依存度の高まりが加速し、コメや果樹にも波及してしまう可能性があります。



農作物の栽培は、「種」から始まります。多くの方の手によってつくられ、栽培された農作物を収穫し、その後その農作物から生まれた「種」を採取し、その「種」が来年の農作物の栽培に使われます。このようにして代々受け継がれ、その土地にあった性質を培った「昔ながらの種」は、「固定種」と呼ばれます。


固定種とは、いわば「普通の野菜の種」。一番よくできた野菜を選んで種を採り、その種を蒔いて育てた中からまた一番よいものを選んで種を採り、といったことを何代も繰り返して品種改良したものです。長い時間をかけて気候や風土に適応し、その土地にしっかり根づいたものですから、肥料や農薬に頼りすぎずに栽培ができますし、種を採って毎年再生産しつづけられます。昭和40年前半頃までは、ほとんどの野菜が固定種でした。



F1種とは、1代目を意味する(first filial generation)の略で「F1」と示されています。「ハイブリッド種」とも言われています。人為的につくられた一代限りの雑種です。別系統の野菜を掛け合わせると、一代目のときだけに現れる雑種強勢によって、野菜の成長が早くなり収穫量も増大。 さらに雑種の一代目は両親の優性形質だけが現れるため、形や大きさも揃う。そんな性質を持った、大量生産・大量消費にうってつけの種です。F1種は1度限りの収穫となり、翌年は再度種を購入する必要があります。


1996年にアメリカのモンサント社がこの種子を開発し、日本は種の自給率が低く90%以上を輸入に頼っているため、輸入穀物がこの遺伝子組み換え種子を多く使用しています。遺伝子を人工的に操り、細菌の遺伝子を組み込む、除草剤を使っても枯れない種で、輸入穀物で飼育されている家畜も多数存在します。またモンサント社は、除草剤とセットで販売しています。

今生産されている野菜の90%以上は、
固定種ではない種で栽培されている

現在の市場で全盛を誇るのは「F1種」。人為的につくられた一代限りの雑種です。昭和40年頃から高度成長期の波が来て、人口も10年ぐらい右肩上がりで増加し、産業も農業から工業へシフトし始めていました。そこで、農産物も効率良く栽培するニーズが出てきたのです。農産物も大量生産の時代に入り、スーパー等でも規格に見合った野菜を求め、生活者全体が色や形や大きさが揃ったものを求め続けたのです。農家は毎年、種を買わなければなりませんが、高齢化で人手の少ない農家にとって、仕事を減らし収入を増やす意味で、またとない種「F1種」になったのです。真っすぐで太さが均等のコンビニのおでん用大根とか、野菜臭さのない野菜とか、タネのないピーマンとか、冬に食べるスイカとか、ナスやトマト、キュウリなども年中あります。完璧を求め、安さを求めた私たち国民にも原因があります。


日本でつくれない、つくることの出来ないF1種は、遺伝子組み換えによる種とは異なりますが、それらの一部では不妊ような問題を抱えています。さらに日本の主食であるお米でも、「F1」種が開発され、一部で販売・輸入されています。報道によると、今年から一部のコンビニにも供給されるようです。将来、市場の農作物のすべてが、「F1」種になる時代が、すぐそこまで来ています。

「種は命の源」のはずが、グローバルの圧力に屈した日本政府によって「種は企業の儲けの源」となり、しかも、日本では家畜の飼料も9割近くが海外依存でまったく足りていません。コロナ禍で不安が高まりましたが、海外からの物流が止まれば、肉も卵も生産できません。飼料米の増産も不可欠です。さらに、海外では食料を十分に食べられない人たちが8億人近くもいて、さらに増加しています。つまり、日本が米を減産したり、食料、穀物を海外に依存している場合ではないのです。しっかり生産できるように政府が支援し、日本国民の命を守るのが日本と世界の安全保障に貢献する道なのです。 これからエネルギーをはじめ、食料の物価は世界中で高騰し続けるでしょう。日本人だけが「30年前と変わらない賃金・年収水準で、食料をはじめ、物価だけが5倍、10倍と上昇していく」そんな世界が、日本が、もう目の前まで近づいています。もう始まっているのです。

「今だけ」「自分だけ」「お金だけ」が蔓延し、平和ボケだらけの日本で、ごく近い未来に訪れる「食」危機。今の子供たちや、孫たち、家族や仲間たちが飢餓に苦しむ姿を見ることを私たちは望んでいるのでしょうか。



パンデミックやワクチン、さらにサル痘の流行までも予言し、的中してきたビル・ゲイツ氏。そのビル&メリンダ・ゲイツ財団がノルウェー国家と一緒に「種」の保存を目的に、2008年「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」を完成させました。日本の種苗法改定により優秀な日本種子のデータも海外へ公開され、日本を含む世界中から植物の種子を受け入れているようです。永久凍土の下に巨大な冷凍室が設置されており、室温はマイナス18~20℃に保たれ、遺伝子組み換え等で品種改良が進んでしまった種子の原種を保存することで、地球上の農作物の多様性を維持しておくことが目的とされています。
世界の終焉を見据えた現代版「ノアの方舟」とも呼ばれていますが、貯蔵された「優秀な種子」は今後どのように使われるのでしょう。